HHKB プログラミングコンテスト 2020 D,E,F問題メモ
個人的にはテンキーやファンクションキーは独立したものが好みだが、それはそれとしてHHKB、打鍵心地がとても好き。
D - Squares
問題
- グリッド上に、左下が $(0,0)$、右上が $(N,N)$ に揃えて置かれた白い正方形がある
- この中に、一辺が $A$ の赤の正方形と 一辺が $B$ の青の正方形を置く
- 白からはみだしてはいけない
- 赤と青が重なってはいけない
- 各辺が軸に平行に、四隅が整数座標になるようにのみ置ける
- 置き方としてあり得る個数を $10^9+7$ で割ったあまりで求めよ
- 1つの入力に $T$ 個のテストケースが与えられるので、全てに答えよ
- $1 \le T \le 10^5$
- $1 \le A,B,N \le 10^9$
解法
各質問に $O(1)$ とかその辺で答える必要がある。結構場合分けが面倒くさい。
まず、$N \lt A+B$ の場合、どうあがいても重ならずに置けないので0。以下それ以外とする。
プロペラみたいに分割すると重複無く数えられる。
●●○○○○ ●●○○○○ ●●○○○○ ●●赤赤■■ ●●赤赤■■ □□□□■■
全ての赤の位置に対して、「■の中に青が置かれる」「○と■にまたがって青が置かれる」パターン数を数えると、その合計の4倍が答えとなる。 (●、○、□に置かれるパターン数は、これを回転させたものと合致し、それぞれ同数だけ存在する)
$A \lt B$ だと $A$ より前に $B$ が下端の制約を受けるので、場合分けが増えてしまう。$A \ge B$ とする。
赤を上から $p$、左から $q$ の位置に置くとすると、$(p=0~N-A,q=0~N-A-B)$
$p \le B-1$
青は、縦 $N$、横 $N-q-A$ の範囲からはみ出さないような位置に置ける。
$$\displaystyle \sum_{p=0}^{B-1}\sum_{q=0}^{N-A-B}(N-B+1)(N-q-A-B+1)$$
Wolfram Alpha先生で式変形すると、以下のようになる。
$$\dfrac{1}{2}B(N-B+1)(N-A-B+2)(N-A-B+1)$$
$p \ge B$
青は、縦 $N-p+B-1$、横 $N-q-A$ の範囲からはみ出さないような位置に置ける。
\begin{eqnarray} & \sum_{p=B}^{N-A}\sum_{q=0}^{N-A-B}(N-p)(N-q-A-B+1) \\ =& \frac{1}{4}(N-A-B+2)(N-A-B+1)^2(N+A-B) \end{eqnarray}
これを計算して合計して4倍すればよい。
E - Lamps
問題
- $H \times W$ のグリッド、
'.
' が空きマスで'#
' が壁 - ある空きマスに照明を置くと、上下左右一直線に、壁に阻まれるまでの全ての空きマスを照らす
- 空きマスの個数を $K$ 個とすると、照明の置き方は $2^K$ 個ある
- 各置き方で、少なくとも1個の照明に照らされているマスの数を計算し、その総和を $10^9+7$ で割ったあまりを求めよ
- $1 \le H,W \le 2000$
解法
典型的な、“縦に見るものを横に見る” 問題。
「このマスが照らされるような置き方の個数」を、全ての空きマスについて合計すると、それが答えとなる。
あるマスから上下左右に繋がる空きマスの個数を $L$ とすると、この中のどれか一つさえ照明が置かれていれば、そのマスは照らされることになる。
│ │ ──○─ │
少なくともどれか1つに置かれる場合は $2^L-1$ 通り。また、これに関わらない他の空きマスはどうなっていてもよいので、$2^{K-L}$ 通り。
これを掛け合わせた $(2^{L}-1)2^{K-L}$ が、あるマスが照らされる置き方の個数となる。
$L$ の求め方は、空きマスが横にいくつ連続するか、縦にいくつ連続するかをそれぞれ個別に求めておくと、その合計-1が $L$ となる。
$2000 \times 2000$ のグリッドを何回か走査することになるので、素のPythonだと厳しい。NumbaやPyPyなどを使った方がよい。
F - Random Max
問題
- $N$ 個の確率変数が与えられ、$i$ 番目の確率変数は $[L_i,R_i]$ の実数を一様ランダムに取る
- これらの確率変数の最大値の期待値を求めよ
- 答えは、$\displaystyle (N+1)! \times \prod_{i}(R_i-L_i)$ をかけると必ず整数になるので、それを $10^9+7$ で割ったあまりで求めよ
- $1 \le N \le 1000$
- $0 \le L_i \lt R_i \le 10^9$
- 入力は全て整数
解法
- 微分積分
- 数学寄りだけど、まぁ微分積分の使い方としては素直
- 変曲点毎に区間を分けて区間毎に処理
- プログラム上でのMODを取りながらの微分積分
このあたりがポイントとなる。
以下の2つの確率変数があったとき、$L,R$ に出現する値で区切る。
i 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1 |--------------| 2 |--------------------| ↓ |-----|--------|-----------|
区間毎に、「全ての確率変数が、その区間内の実数 $x$ 以下の値を取る場合の確率」を、多項式で表現できる。($f(x)$ とする)
1つの確率変数についてみれば、
- $x \lt L_i$ の時、$0$
- $L_i \le x \le R_i$ の時、$\dfrac{x-L_i}{R_i-L_i}$
- $R_i \lt x$ の時、$1$
これを掛け合わせたのが、全体の確率となる。
i 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1 |--------------| 2 |--------------------| |-----|--------|-----------| x-1 x-1 変数1 ----- ----- 1 6-1 6-1 x-3 x-3 変数2 0 ----- ----- 10-3 10-3 かけあわせる↓ (x-1)(x-3) x-3 各区間の 0 ------------ ----- f(x) (6-1)(10-3) 10-3
最初に $L,R$ で区切ったのは、各確率変数がそこで滑らかでなくなり、それを掛け合わせた $f(x)$ も滑らかでなくなるから(滑らかでないと微分できない)。
さて、これはあくまで $x$ 以下の確率なので、$x$ ちょうどになる確率1)を求めたい。
これは微分した式 $f'(x)$ がそれに当たる。
求めるのは期待値なので、$xf'(x)$ が、「最大値が $x$ だった場合に答えに寄与する値」となる。
これを、今度は積分を取ると、「区間全体が答えに寄与する値」を求められる。
よって、区間の両端を $[P,Q)$ とすると、以下の式を区間毎に計算し、合計したもの(に、かけろと言われている数をかけたもの)が答えとなる。
- $\displaystyle \int_P^Q xf'(x)dx$
実装上は、多項式を表現できるクラスを作っておいて、
- $(a_0+a_1x+a_2x^2+...)$ と $b_0+b_1x$ をかける
- $(a_0+a_1x+a_2x^2+...)$ を $b_0+b_1x$ で割る(割り切れることは保証される)
- $(a_0+a_1x+a_2x^2+...)$ を微分する
- $(a_0+a_1x+a_2x^2+...)$ を積分する
- $(a_0+a_1x+a_2x^2+...)$ の $x$ に具体的な値を代入する
等ができるようにしておくと、$f(x)=1$ で初期化しておいて、区間 $[P, Q)$ を昇順に
- もし $L_{max} \lt Q$ なら、その区間は答えに寄与するので、$\displaystyle \int_P^Q xf'(x)dx$ を答えに加算する
- $Q$ が $L_i$ 由来なら、$f(x)$ にその確率変数の $\dfrac{x-L_i}{R_i-L_i}$ をかける
- $Q$ が $R_i$ 由来なら、$f(x)$ をその確率変数の $\dfrac{x-L_i}{R_i-L_i}$ で割る
とすればよい。