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AtCoder Grand Contest 070 A問題メモ

AtCoder Grand Contest 070

としのせのせのせこしたんたん

A - Multiples in the String

問題文

  • この問題は output-only です。入力は与えられません。
  • 正整数 X と文字列 S の組 (X,S) であって以下の条件を全て満たすものを 1 つ挙げてください。
    • X1050 以上 105000 未満の正整数である。
    • S は 0 から 9 までの数字からなる長さ 5000 以下の文字列である。
    • 1i1000 を満たす整数 i 全てに対して次の条件が成り立つ。
      • Xi 倍した整数を 10 進表記して出来る文字列は S の(連続な)部分文字列である。

解法

気がつけば一発な構築問題。
要求される知識は、雑学としてそこそこ有名ではあるが、競プロで使われるのは珍しめで気付くのに時間かかった。
その分、気がついたときは「なるほど!」と唸らされる問題。

はじめに陥った方針

X='10002000400080016…' みたいに、桁を揃えて2の累乗数を連ねていけば、 2 の累乗倍に関してはずらすだけでいいな。。。とか考えていた。
こうすると、5 の累乗倍に関しても '50010002000400080…' と、元の X の左側を拡張することで重ねられる。

が、それ以外の倍数は '300060012…'、'700140028…' みたいに、 結局、独自に50桁を消費して S に埋め込まなければならない。
11000 の中で、k×2x5y と表されるような k の種類の数だけ、独自に50桁(以上)を使う必要があるが、 そのような k は400種類ほどあるため、とても |S|5000 では無理。

もっと何か、全然別の発想が必要となる。

正しい方針

ふと、7の倍数は巡回することを思い出す。

142857 × 1 = 142857
142857 × 2 = 285714
142857 × 3 = 428571
142857 × 4 = 571428
142857 × 5 = 714285
142857 × 6 = 857142

仮に X=142857,S=142857142857 とすることで、i=16 の時には要件を満たす。

このような数が他にないか調べると、巡回数 に行き着く。

1a の小数の循環部分を取り出したものを X とすると、 X1a1 をかけた数がいずれも X を転回させたものとなるような特徴を持つ a は、 A001913 - OEIS にまとめられている。(ページ冒頭では1000未満の数までしか掲載されていないが、中ほどにあるLINKSの “Table of n, a(n) for n = 1..10000” から続きを見られる)

a>1000 を満たす、例えば a=1019 などとして X を求め、それを2つ繋げたものを S とすれば答えとなる。

X を求めるのは、Pythonなど多倍長整数が可能な言語なら 10a11a を計算すればよい。

補足1

何故このような綺麗な形になるのか?
これは、原始根と関係がある。

循環小数は、10倍したら当然、1桁ずれた形になる。循環する長さ分だけ繰り返したら、以降はループするので止める。

     1/7 =     0.142857142857...
    10/7 =     1.428571428571...
   100/7 =    14.285714285714...
  1000/7 =   142.857142857142...
 10000/7 =  1428.571428571428...
100000/7 = 14285.714285714285...

ここから、右辺の整数部分にあたる数を両辺から引くと、左辺の分子には1~6が1回ずつ現れる。

1/7 = 0.142857142857...
3/7 = 0.428571428571...
2/7 = 0.285714285714...
6/7 = 0.857142857142...
4/7 = 0.571428571428...
5/7 = 0.714285714285...

循環部分を取り出して x とすると、x16 倍に、1桁ずつずれたものが1回ずつ現れる。
x の7倍が 106 未満なので、7桁目に繰り上がることはない。

 x = 142857
3x = 428571
2x = 285714
6x = 857142
4x = 571428
5x = 714285

1,10,102,103,...,10a2moda に、1a1 が1回ずつ現れるような a が、このような性質となる。
10 を原始根として持つ1001以上の素数」を a にすればよいことがわかる。

補足2

さらに、(手間が増えるので敢えて選択する意味はあまりないが)原始根や素数でなくてもよい。

たとえば a=13 は10を原始根として持たないが、1/1312/13 は6桁を循環節とする2タイプに分けられる。
(巡回させて一致するものを「同じタイプ」とする)

                          循環節タイプ
01/13 = 0.076923076923    ① 076923
02/13 = 0.153846153846           ::       ② 153846
03/13 = 0.230769230769    ①     230769          ::
04/13 = 0.307692307692    ①      307692         ::
05/13 = 0.384615384615            ::      ②   384615
06/13 = 0.461538461538            ::      ②     461538
07/13 = 0.538461538461            ::      ②  538461
08/13 = 0.615384615384            ::      ②      615384
09/13 = 0.692307692307    ①   692307             ::
10/13 = 0.769230769230    ①  769230              ::
11/13 = 0.846153846153            ::      ②    846153
12/13 = 0.923076923076    ①    923076

なので、X=76923S=076923076923153846153846 (2タイプの循環節をそれぞれ2回繰り返した文字列)とすると、i=112 に対して条件を満たす。

a10 と互いに素でない場合は循環小数の開始位置がずれるため上手くいかないが、 10 と互いに素な整数を a とするといくつかのタイプの循環部分のグループに分けられる。
さらにそのタイプ毎の循環節の長さの和は a1 となる性質がある。

ただ、10と互いに素なら何でも良いかというと、上手くいかない整数もある。

例えば分母として a=1029(=3×73) を考えると、x/a を循環節の長さとタイプで分けると以下の通り。

  • 294桁になる x が3種882個
  • 42桁になる x が3種126個
  • 6桁になる x が3種18個
  • 1桁になる x が2種2個

この「循環節の長さ×タイプ数」の和は、294×3+42×3+6×3+1×2=1028 で、a1 と等しくなる性質がある。
よって、もし「単純に各循環節を2回ずつ繰り返した文字列を結合したものを S とする」なら、a2500 に対して S5000 が保証される。

だがこの問題では、循環節が6桁や1桁のものも、S に含める際には最大のものに合わせて294桁にしないといけない。

たとえば 147/1029=0.142857142857... より6桁で循環するが、 X1/1029 の循環節にあわせて294桁とする場合、 147XS に含める文字列も「142857142857…(294桁)」と、繰り返したものにしなければならない。

よって、S に必要な長さは「循環節の『最大長さ』 × 全ての循環節のタイプ数」の2倍となり、必ずしも a に比例しなくなる。
a2500 であっても、必ずしも |S|5000 に収まるとは限らなくなる。

a=1029 の例では、294×11×2=5184 で、制約を超えてしまう。

programming_algorithm/contest_history/atcoder/2024/1229_agc070.txt · 最終更新: 2024/12/31 by ikatakos
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