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NS Solutions Corporation Programming Contest 2023(AtCoder Beginner Contest 303)F,G,Ex問題メモ
F - Damage over Time
問題
- N 種類の魔法で、体力 H のモンスターに攻撃して0以下にしたい
- 1ターンに1個の魔法を選んで使える
- 魔法 i をターン t に使用すると、t から t+Ti−1 の Ti ターンにかけて、1ターン毎に Di のダメージを与える
- 効果は加算で累積して、次ターンに魔法 j を使うと Di+Dj のダメージを与える(魔法 i が切れていなければ)
- 最も早く倒すには何ターンかかるか、求めよ
- 1≤N≤3×105
- 1≤H≤1018
- 1≤Ti,Di≤109
解法
二分探索が浮かんだが、無くても解けるみたい。でもせっかくだし二分探索解法をメモ。
魔法 i は、時間いっぱいかければ計 TiDi のダメージを与えるが、、、
H = 100 10000 ターン毎ターン 1 のスリップダメージ 1 ターン毎ターン 100 のスリップダメージ T*D が小さくても、2番目を使った方がいいのは明らか
ゴールが見えていないと、どれくらい先まで有効な魔法を使っていいのか、見えづらい。
なので、ゴールを固定し「K ターンまでに倒せるか?」の判定問題が O(N) くらいで解ければ、二分探索で O(NlogH) で求められる。
判定問題
いま、K まで残り r ターンとする。
Ti が r 以上か、未満かで分ける。(その魔法の集合をそれぞれ X,Y とする)
- X から選んで使うとしたら、有効なターン数は r なので、計 rDi の総ダメージ
- → Di 最大のものを使うべき
- Y から選んで使うとしたら、フル(TiDi の総ダメージ)で与えられる
- → TiDi 最大のものを使うべき
総ダメージの大きい方を使う。図化すると、
D ↑ |───┐ | │ |───┼──┐ |───┼──┼──┐ +----------------|-----> T,残りターン r 各長方形が魔法で、r より左のやつは面積が一番大きいの、 右にはみ出てるやつは一番高いのを選んで使う
魔法を1回使うと、r が1減る。同時に X の魔法で与えられる総ダメージも減る。
H が馬鹿でかいので、1ターンずつこれを処理しているとTLE。
変曲点毎にまとめて処理する。(変曲点:使う魔法を変えた方が得になる可能性がある点)
変曲点は、以下の2つ。
- はじめ、X を使った方がダメージが大きかったが、途中から Y を使った方がよくなる r
- Y から X に移る魔法がある r
1つめは、TyDy/Dx で出せる。
2つめも、あらかじめソートしておけば次に来る Ti は分かる。
このような変曲点は、ざっくり見積もりで最大 2N 個あるので、計算オーダーもその程度となる。
細かな注意点として、
- TiDi 基準と Ti 基準でそれぞれソートした配列がほしくなるが、これは二分探索で毎回ソートしていると O(logN) が余分にかかってしまう。結果は不変なので、全体で1回ソートしたものを使い回せる
- X の魔法を繰り返し使う場合、有効ターンが1ターンずつ減っていくので、延べターン数は等差数列の和になる
解法2
解法1と近い考え方で、二分探索が不要であるようにできる。(むしろ二分探索考察時に、何故これに気がつかないのか)
ターンを逆順から考える。
先ほどの説明中の、残りターン数 r を、r=1 から徐々に増やしていく感じ。
「今が何ターン目かは分からないが、倒しきる最終ターン」であると考える(ちょっと奇妙だが)。
r=1,2,3,... の時々に最適な魔法は決まるので、その総ダメージの合計値が H になった時が、倒せるターン。
1魔法当たりの総ダメージのグラフは以下のような感じになる。
f(i,r): 残りターン r で放った魔法 i が与える総ダメージ 総ダメ↑ | Dk*Tk_| ____↙魔法 k の線 Dj*Tj_| _____-~____↙魔法 j の線 斜線の傾きが各 $D$ を表す。 Di*Ti_| ___/__-~_______↙魔法 i の線 | / /_-~ |//-~ ┼-------------------> r Ti Tj Tk
r を増やしてって、r ごとに max を合計していき、 合計が H になればその時の r が答え。
解法1と同様、変曲点(グラフの屈折点、または最適な魔法が変わる交点)毎にまとめれば、 O(N) で r までの総ダメージを計算できる。
G - Bags Game
問題
- N 個のバッグが横一列に並び、i 番目には X_i 円入っている
- 太郎と次郎が、太郎を先手として交互に、以下の3つから1つ選んで行動する
- 残っている両端のどちらかのバッグから1個取る
- A 円失う。「残っている両端のどちらかのバッグから1個取る」ことを B 回まで繰り返す
- C 円失う。「残っている両端のどちらかのバッグから1個取る」ことを D 回まで繰り返す
- バッグがなくなるまで繰り返し、最終的に「バッグから獲得した金額 - 失った金額」を利得とする
- (※利得が負になるだけで、2,3番目の行動はいつでも取れる)
- 「自分の利得 - 相手の利得」を「スコア」とし、両者、これを最大化するように行動する
- 太郎が実現できるスコアの最大値を求めよ
- 1 \le N \le 3000
- 1 \le X_i,A,C \le 10^9
解法
バッグは常に連続した区間が残り続ける。問題設定的にも、制約的にも、いかにも区間DPっぽい。
行動指針や取れる行動が、太郎も次郎も変わらないので、 「ある盤面から、次に行動する方(先手)が実現できるスコア」は、太郎も次郎も一緒。
また、行動指針が「自分 - 相手」なので、
「ある行動をして、その後、ある盤面を相手に引き渡したときのスコア」は、
「その行動によって得られた利得 - その盤面から先手が実現できるスコア」となる。
以下のDPを考える。
- DP[w,l]= 長さ w、左端 l の区間のバッグから始めて、先手が実現できるスコア
(通常、区間DPは [l,r) の区間を添え字 (l,r) で表現することもあるが、今回はこっちの方がやりやすい)
r=l+w となる。
初期値を
- w=0 の場合は DP[0,*]=0
- w=1 の場合は DP[1,l]=X_l
として、狭い区間から、より広い区間を求めていく。
[l,r) の時に取れる行動は、
l r ... o o o o o o o ... x o o o o o o 左端を取る o o o o o o x 右端を取る x x o o o x x A円払ってB個取る(この例では4) x o o x x x x C円払ってD個取る(この例では5)
それぞれ、「x のバッグに入っている金額の和 - 支払った金額 - 残った区間のDP結果」がスコアになるので、 その中の最大値を取れば良い。
ただ、A 円払う行動では、どの区間を残すかが B+1 通りある。
制約的に、O(N^2)~O(N^2 \log{N}) くらいまでしか許容されないので、これを1つ1つ調べることは O(N^3) となりできない。
これを効率的に計算したい。
高速化
DP[l,r] を求めるに当たっての行動 (A,B) の最適なスコア計算を考える。((C,D) も同様に考えられる)
(取ったバッグに入っている金額の和 - 支払った金額 A - 残った区間のDP結果)をよく考えると、
- 取ったバッグに入っている金額の和 = (区間 [l,r) の X の和) - (残した区間の X の和)
なので、残す区間を [p,q) として、
- (区間 [l,r) の X の和) - (区間 [p,q) の X の和) - A - (区間 [p,q) のDP結果)
「区間 [l,r) の X の和」と「支払った金額」は一定なので、結局
- (区間 [p,q) の X の和) + (区間 [p,q) のDP結果) … ①
を最小化するような [p,q) を選べばよいことになる。
区間長 w から B 個取ったときに残るのは w-B 個なので、DP[w-B,(p=0,1,...)] から①をそれぞれ求めておく。 (Y_p とする)
[l,r) を求めるときに使うのは p=l~l+B なので、Y_l~Y_{l+B} の最小値が求められればよい。
この区間最小値は、l+1,l+2,... のDPを求めるときにも使い回したいことを考えると、スライド最小値などで求められる。
スライド最小値だと、w ごとに O(N) なので、全体で O(N^2)。セグメント木に載せてもよくて、O(N^2 \log{N}) となる。
「1つずつずれた区間の値を示す数列の、さらに区間最小値」を求めるので、添字など混乱してしまう。頑張る。
Ex - Constrained Tree Degree
問題
- N 頂点の木のうち、以下の条件を満たすものの個数を \mod{998244353} で答えよ
- 全ての頂点は区別できる(ラベル付き木)
- どの頂点の次数も、与えられる K 個の整数集合 S=\{S_1,...,S_K\} に含まれる
- 2 \le N \le 2 \times 10^5
解法
知識寄りの問題。
ラベル付き木は、プリューファーコードと呼ばれる数列に変換できることが知られている。
数列の個数を数え上げることで、木の個数も数え上げられる。
頂点 i の次数を d_i とすると、i はプリューファーコードにおいて必ず d_i-1 回現れる。
(葉から処理する過程で、隣接する葉が消される時に自身が記録され、自身が葉になり処理される最後の1回は記録されないため)
プリューファーコードの長さは N-2 なので、
- 各 i につき、d_i \in S
- (d_1-1)+(d_2-1)+...+(d_N-1)=N-2
の2つを満たすような全ての (d_1,...,d_N) の組み合わせについて、
- 1 を d_1-1 個、2を d_2-1 個、、、N を d_N-1 個並べるときの並べ方の個数は?
- → \displaystyle \frac{(N-2)!}{(d_1-1)!(d_2-1)!...(d_N-1)!}
を足し合わせたものが答えとなる。
分母のような形の計算は形式的冪級数を使うと表現しやすく、たとえば S=\{1,4,6\} のとき、
- X = \dfrac{1}{0!}x^0 + \dfrac{1}{3!}x^3 + \dfrac{1}{5!}x^5
という1頂点当たりの情報をもった X を想定すると、X^N における x^{N-2} の係数に
- \displaystyle \sum_{条件を満たす全ての (d_1,...,d_N)}\frac{1}{(d_1-1)!(d_2-1)!...(d_N-1)!}
が現れるので、(N-2)! をかけたものが答えとなる。
繰り返し二乗法の要領で畳み込みをおこなうことで、O(N(\log{N})^2) で答えが求められる。