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AtCoder Beginner Contest 292 G,Ex問題メモ
G - Count Strictly Increasing Sequences
問題
- N 個の長さ M の数字列 S1,...,SN があり、一部の文字は '?' で隠されている
- 全ての '?' を独立に '0'~'9' に置き換える
- 置き換える方法のうち、S1<S2<...<SN となるものが何通りあるか、mod998244353 で求めよ
- 先頭が'0'であってもよい
- 1≤N,M≤40
解法
深さのある区間DP。
制約の小さな問題は、階層の深いDPである可能性が高いので、組み立て方の自由度が高い分難しい。
大小が関係あるので、桁DPっぽく上の桁から'?'を確定させていきたくなるが、その場合は 「Si は、Si−1 より大きいことが確定しているので次の桁には何を置いてもよい」のか、 「まだ確定していないので次の桁には Si−1 以上の数字を置かないといけない」のか、 管理しないと決められない。
だが、Si−1 自体も、Si−2 より大きいことが確定している場合と未確定の場合で、 上の桁の状態が変わり、次の桁における数字も異なってきて、とても上手くまとめて管理できない。
「上位桁から見ていって、k 桁目の前までまだ Sl~Sr−1 の範囲の大小関係が区別できていない」という状態を管理して、 これを再帰的に分割していくことを考える。
k Sl XXXX ? ??? Sl+1 XXXX ? ??? Sl+2 XXXX ? ??? Sl+3 XXXX ? ??? : Sr-2 XXXX ? ??? Sr-1 XXXX ? ??? ~~~~ 同じ
Sl から続く何個かの k 桁目をまとめて決めると、
k Sl XXXX 4 ??? Sl+1 XXXX 4 ??? : Sx-1 XXXX 4 ??? Sx XXXX ? ??? : Sr-1 XXXX ? ???
[l,x) と [x,r) の区間に分けられ、後者の区間の値に制約を持たせれば、この2区間の間の大小関係は確定する。
k k+1 Sl XXXX 4 ? ?? ┐ Sl+1 XXXX 4 ? ?? │[l, x) が k+1 桁目の前まで同じ : │ Sx-1 XXXX 4 ? ?? ┘ Sx XXXX ? ? ?? ┐[x, r) が k 桁目の前まで同じ : │ただし Sx の k 桁目は '5' 以上 Sr-1 XXXX ? ? ?? ┘
よって、以下の関数を定義してやれば、
- f(l,r,k,d)=S の [l,r) の範囲が上位 k−1 桁までは同じで、Sl の k 桁目は d 以上である場合に、k 桁目以降の '?' の決め方で、[l,r) 内の全ての大小関係が昇順に確定する場合の数
上の例は、f(l,r,k,d) を、f(l,x,k+1,0) と f(x,r,k,5) に分割したことになる。
f(0,N,0,0) が答えとなる。ここからはじめて再帰的に答えを求めていく。
何度も同じ係数が呼ばれうるため、f() はメモ化再帰で実装する。
遷移を考えると、
- [l,x)(x=l+1,...,r)の範囲の k 桁目に d を配置する
- f(l,r,k,d)+=f(l,x,k+1,0)×f(x,r,k,d+1)
- [l,x) の k 桁目に1つでも、d 以外の数字がある場合は不可
- Sl の k 桁目に置くのを d+1 以上にする
- f(l,r,k,d)+=f(l,r,k,d+1)
終端条件は、
- l=r なら 1(遷移で x として r を選んだとき用)
- d≥10 なら 0
- k=M まで進んだとき、
- [l,r) の長さが1なら 1
- そうでないなら全く同じ複数の Si ができてしまったということなので 0
計算量は、f() の状態数が O(N2MD)(ただし D は文字種数 =10)、 遷移に O(N) なので、O(N3MD) となる。
Ex - Rating Estimator
問題
- あなたはこれから N 回のコンテストに参加し、それぞれで a1,...,aN のパフォーマンスを得る予定である
- レーティングという値がある
- 各コンテスト終了後、それまでに参加したコンテストのパフォーマンスの平均値で更新される
- ただしレーティングが一度でも B 以上になると、それ以降は変動しない
- Q 個のクエリが与えられる
- ci,xi が与えられる
- 獲得予定のパフォーマンス a1,...,aN のうち、aci を xi に(永続的に)変更する
- その上で、N 個のコンテストで予定通りのパフォーマンスが得られた場合の最終的なレーティングを求めよ
- 1≤N≤5×105
- 0≤ai,xi,B≤109
解法
AtCoderのレーティングと似たような設定で題意はわかりやすい。(レーティングの算出方法は違うが)
平均の変換
セグメント木などで区間の“平均”を管理しようと思うと、 [l,r) の和とその長さ r−l を持つことになる。
ただし、「平均がある決まった1つの値 B より大きいか小さいか」の判定だけなら、 載せる値から一律に B を引いておくことで、「区間和が 0 より大きいか小さいか」だけで判定でき、 長さを省略できて楽になる。
セグメント木で管理する値
bi=ai−B とし、bi をセグメント木で管理する。
今回の問題では、「一番始めに b1+b2+...+bi が 0 以上になる i」を求めたい。
- もしそのような i があるなら、答えは b1+b2+...+bii+B
- ないなら、答えは b1+...+bNN+B
なので、bi の「先頭からの累積和」と、さらにその「累積和の先頭からの累積MAX」を同時に管理したい。
累積和は bi の値によって上下するためはじめて 0 以上が出現する位置を特定しづらいが、
累積MAXを取っておけば、それを参照して二分探索が可能になる。
各セグメント木のノードに、(その区間の和, その区間の中での先頭からの累積和のMAX) を載せればよい。
ノード n に対して、それぞれ n[0],n[1] とする。
ノード L と R をマージするとき、
- 区間和は普通に L[0]+R[0]
- 累積和MAXは max(L[1],L[0]+R[1])
R の部分の累積MAXは、マージすると L の区間和分だけスタート位置がずれるので、L[0]+R[1] で求められる。
セグメント木上の二分探索
クエリ ci,xi に対して、更新作業は、bci の値を (xi−B,xi−B) で上書きする、という操作になった。
あとは、累積MAXが最初に 0 以上になる位置を二分探索で求めたい。
セグメント木に区間クエリ [1,i) を何度か投げて i を二分探索してもよいが、それだと1回毎に O(log2N) かかる。
速い言語なら間に合うかも?だが、制約の大きさから、厳しめに設定してあるように感じる。
ここでは、セグメント木に投げるクエリではなく、直接的にセグメント木上で二分探索を行う。
一度でも累積和が 0 以上となるか否かは根ノードを参照すれば簡単に分かるので、 どこかでは 0 以上となる場合のみを考える。
- 今いるノードを n とし、根ノードからスタート
- 左の子の累積MAX L[1] が0以上なら、答えは左にある→左ノードへ n←L
- 左の子の累積MAX L[1] が0未満なら、答えは右にある→右ノードへ n←R
- また、自身より左の区間の総和 L[0] を LS に記録しておく
根以降は、自身より左の区間の総和も含めて累積MAXを計算する必要があるので、
- LS+L[1] が0以上なら、左ノードへ
- LS+L[1] が0未満なら、LS に L[0] を加算し、右ノードへ
これを繰り返して、n が葉になったらその位置が、累積MAXが最初に 0 以上となる位置となる。
これなら O(logN) で求められ、全体で O(N+QlogN) となる。