AtCoder Beginner Contest 217 G,H問題メモ
G - Groups
問題
- 1~N の番号が付いた人を空でない k 個のグループに分ける
- このとき、番号を M で割ったあまりが等しい人は同じグループになってはいけない
- k=1~N のそれぞれについて、分け方の個数を \mod{998244353} で求めよ
- 2 \le M \le N \le 5000
解法
同じグループになってはいけない人々の集合を、「不仲組」と呼ぶことにする。
不仲組は、k がいくつの時でも N,M だけで決まっている。
N を M で割った商とあまりを d,m として、
- ① d+1 人からなる不仲組が m 組
- ② d 人からなる不仲組が M-m 組
N = 17 M = 4 不仲組1 1 5 9 13 17 d=4 m=1 不仲組2 2 6 10 14 5人の不仲組が1組 不仲組3 3 7 11 15 4人の不仲組が3組 不仲組4 4 8 12 16
不仲組毎に分け方を決めていく。
各不仲組のグループの分け方は他の不仲組に影響しないので、独立に決められる。
「ちょうど k 個」は考えづらいので、「k 個以下」のグループに分ける方法の個数を考える。
あらかじめ区別できる箱が k 個並んでいて、そこに番号のついたボールを入れていくとすると、
- ① k 個の箱に d+1 個のボールを被らないように入れることを m 回繰り返す… ({}_kP_{d+1})^m
- ② k 個の箱に d 個のボールを被らないように入れることを M-m 回繰り返す… ({}_kP_{d})^{M-m}
この積が、全体を k 個以下の箱に分ける方法の個数である。
ここから重複を除き、ちょうど k 個の場合を求める。以下の2つが余計に数えられている。
- k 個をフルに使っていないもの
- 箱を並べ替えたら同じになるもの
k 個のうち、l 個(1 \le l \lt k)しか使っていないものを考える。「ちょうど l 個」の答え Ans_l は既に求まっているとする。
k 個の箱のどれをどの順に l 個に対応づけるかで {}_kP_l 通りなので、l 個しか使っていないものは {}_kP_l \times Ans_l 通りとなる。
l=1~k-1 まで走査して除外する。
残りは、k 個をフルに使っているが箱を並べ替えたら同じになるものなので、k! で割ればよい。
計算量は O(N^2) となる。
O(N \log{N}) 解法
重複を除く部分は包除原理を適用することでも可能。
先ほどの「区別できる k 個の箱に、空の箱を許して配る方法の個数」を g(k) とする。
また、「区別できる“ちょうど” k 個の箱に配る方法の個数」を h(k) とする。
すると、求めたい答え f(k)=\frac{h(k)}{k!} となる。
「k 個の箱のうち、少なくとも i 個が空である状態」という風に考えて包除原理を適用すると、 「g(k-i) に対して新たに空の箱を i 個追加して k 個にするパターン」を引いたり足したりすればいいので、
- h(k)=g(k) - g(k-1) {}_kC_{1} + g(k-2) {}_kC_{2} - ... g(0) {}_kC_{k}
- \displaystyle h(k)=\sum_{i=0}^{k} (-1)^i g(k-i) {}_kC_{i}
これを変形すると、
- \displaystyle h(k)=\sum_{i+j=k} (-1)^i g(j) {}_kC_{i}
- \displaystyle h(k)=\sum_{i+j=k} (-1)^i g(j) \frac{k!}{i!j!}
- \displaystyle h(k)=k! \sum_{i+j=k} \frac{(-1)^i}{i!} \frac{g(j)}{j!}
- \displaystyle f(k)=\sum_{i+j=k} \frac{(-1)^i}{i!} \frac{g(j)}{j!}
となり、畳み込みに適した形となる。これで O(N \log{N}) で計算できる。
H - Snuketoon
問題
- すぬけ君は時刻 0 に、無限に続く数直線上の座標 0 にいる
- すぬけ君は速さ1以下で数直線上を動ける
- 今から N 回、左右の無限遠から水鉄砲が発射され、位置によってはダメージを負う
- i 回目の発射
- 時刻 T_i
- 左右どちらから発車されるか D_i
- どこまで届くか X_i
- 左からの場合、すぬけ君が X_i より左の座標 p にいたら |X_i-p| のダメージ
- 右からの場合、すぬけ君が X_i より右の座標 p にいたら |X_i-p| のダメージ
- すぬけ君が負うダメージの最小値を求めよ
- 1 \le N \le 2 \times 10^5
- 1 \le T_i \le 10^9 で、互いに相異なる
解法
slope trickという手法を用いる。
名前は聞き馴染みが無かったが、図で考えると発想は理解しやすい。
公式editorialにもある通り、日本語資料としては以下の記事が図入りでわかりやすい。
愚直には以下のDPを考えたくなる。(実際にはこの形では実装しない。x の範囲がでかすぎるし)
- DP[t][x]= 時刻 t に座標 x にいるときの最小コスト
どの t の時点でも、f(x)=DP[t][x] は「傾きが単調増加で、必ず整数」の形となる。
このように区間毎に直線に分割される関数を「区分線形関数」と称する。
傾き -3 -2 -1 0 1 4 \ / \ / \ / \ / ~~--,__.--~~ ----|---|----|--|----|----- 2 5 8 10 12
「傾きが単調増加で全て整数な区分線形関数 f(x)」は、以下の3つの情報を持っておけば復元できる。
- f(x) の最小値
- 正の傾きの屈曲点の優先度付きキュー
[ 10 12 12 12]
- 負の傾きの屈曲点の優先度付きキュー
[ 2 5 8]
傾きが1増加する点を「屈曲点」と呼ぶことにする。
傾き 1→4 のように一足飛びで変化する点は、複数の屈曲点が重なっていると見做す。
この3つを管理することで、f(x) を更新していく。
更新操作
主に以下の2つの方法となる。
- 次に水鉄砲が撃たれるまで移動する分の更新
- 水鉄砲が撃たれた分の更新
移動による更新
移動は、次に水鉄砲が撃たれるまでの時刻を \Delta t として、最小値を中心に正負それぞれ \Delta t だけ広げた形となる。
Δt = 3 \ / \ / \ / \ / ~~--,________.--~~ ----|---|----|--------|----|----- -1 2 5 13 15
[ 10 12 12 12]
→[ 13 15 15 15]
[ 2 5 8]
→[ -1 2 5]
キュー内の値全体に \Delta t, -\Delta t が足される。
本当に全要素に加算すると時間かかるので、実際には外部でオフセットとして持っておく。
水鉄砲による更新
水鉄砲で受けるダメージは、以下のいずれかのように単純な関数の足し合わせとなる。
- f(x) に g(x)=\max(0, a-x) を足す
- ある x=a までは傾き -1 の直線で、そこから 0 という形
\__
をしている
- f(x) に g(x)=\max(0, x-a) を足す
- ある x=a までは 0 で、そこから傾き 1 の直線という形
__/
をしている
a=X_i と、傾きが0の区間(負の屈曲点キューの最大値~正の屈曲点キューの最小値)の位置関係によって場合分けする。 詳細は冒頭の解説記事参照。
主に以下の操作で更新が可能となる。
- 正または負の屈曲点キュー(位置関係によって決まる)に、a を追加する
- 最小値の区間が変化する場合、
- 正から負の屈曲点キューへ(またはその逆へ)、先頭の要素を1つだけ移す
- 最小値を更新する
傾き1や-1の関数を足すという操作では最小値をとる区間は高々1つしかズレないため、 屈曲点キュー間のやりとりも高々1回で済む、というのがポイント。
更新が1回 O(\log{N}) でできるため、全体で O(N\log{N}) となる。
初期状態
この問題では初期状態は必ず座標0からスタートする制約がある。
一般的なslope trickでは f(x)=0 からスタートするため、 たとえば t=1 に座標 10^9 未満に水鉄砲が撃たれても「はじめ 10^9 にいたことにすればいいじゃん」みたいになりコストが狂ってしまう。
これは、以下の2つの方法で回避できる。
初期状態の工夫
初期状態を、傾き0の区間が [0,0] であり、両端の傾きが∞であると見做せばよい。
「傾き∞」を表現するには屈曲点キューに大量の 0 を入れておけばよい。
今回の場合、最低限、更新回数である N 個の 0 を両方のキューに入れておけばよい。
または、答えが狂うのは正のキューから(真値からオフセットが引かれた後での)正の値が取り出されたり、 負のキューから負の値が取り出されたときなので、更新時にそれが発生した場合は取り出さずに0として扱う、としてもよい。
逆順
最後にはどこに居てもいいので、クエリを逆順に処理する。
最終的に f(0) の値が答えとなる。
f(0) を求めるのは O(N) でできる。(キューから値を1個ずつ取り出して、傾き×区間長を足していけばいい)
発展
今回、傾きの変化が1ずつだったので、最小値の区間がずれても高々1個のため、2本の優先度付きキューで管理できた。
しかし、「同様に __/
の形を足すが、その傾きが任意の整数」という場合は、一度に最小値の区間が大きくズレることで、
優先度付きキューだと一方から一方へ移す操作が多くかかってしまう。
その場合、平衡二分探索木で管理できるらしい。