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Dvorak配列用の日本語入力1 -2013/01/28
Dvorak配列
Dvorak配列用の日本語入力ルールを考えている。
Dvorak配列は1932年にドヴォラックって偉い人が「QWERTY配列ってマジ打ちにくくね?」といって、英語を打ちやすくなるように文字使用頻度の統計や指の動きを考慮して発案された配列。
使用頻度の高いキーが打ちやすい位置にまとまっているし、右手と左手を交互に打鍵するように子音が右、母音が左手のホームポジションに一列になっていたり1)、連続する子音(sh, ch, stなど)は「タタンッ」と連続して打ちやすい配置になっている。打ちやすいと言うことはそれだけ覚えやすいということでもある。
小指 | 薬指 | 中指 | 人差指 | 伸ばす | 伸ばす | 人差指 | 中指 | 薬指 | 小指 | 伸 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
, | . | p | y | f | g | c | r | l | |||
a | o | e | u | i | d | h | t | n | s | - | |
q | j | k | x | b | m | w | v | z |
日本語のローマ字入力に持ってきても、母音の位置からして結構効率がよい。英語以上に「子音の次に母音」が多いので、より左右交互打鍵を意識した造りが映えるのだ。また、英語でよく使われる子音は日本語でもよく使われるため、右手で入力する子音の位置に特に難点はない。
だが、幾つかの点でやはり打ちにくい組み合わせがある。
Dvorak配列でローマ字入力の欠点と対策
欠点
K,Y,P,Jの位置
母音が左手にまとまっているのだから、子音は右手にあった方が望ましい。だが「K」は左手にある。「くき(KUKI)」などは左手人差し指だけを忙しなく動かして入力しなければならない。「K」は日本語で「N」「S」に次いでよく使われる子音らしく、無視できるものではない。
さらに拗音(ひゃ、にょetc.)を入力するときに使う「Y」も左手、しかも伸ばさなければ届かない位置である。「きゅ(KYU)」なんて入力しようものなら人差し指が往年のセルゲイ・ブブカも舌を巻くほどの大跳躍を見せなければならない。
残る左手の子音は「P」「Q」「J」「X」である。この内「P」もよく使われるため、「ぴ」「ぷ」などは入力しづらい。「ジャ行」も困る。「J」「ZY」のどちらも打ちやすくはない。「Q」はまぁ使わないのでいいだろう。「X」は小書き(ゃゅょぁぃぅぇぉ)に使う人もいるが、「L」でも代用できる。
Zの位置
そこそこ出てくる「ザ行」を入力するのに使うZは、右小指下段である。
小指を縮こめて打鍵せねばならず、位置も間違いやすい。
何回も出てくると割と早い段階で手が痛くなってくる。
また、手の構造故か知らないが、Zは特に「Z→他の右手キー」という打鍵がしづらい。
対策
既に多くの日本語用Dvorak配列が考案されていて、この問題に対して幾つかの対策を備えている。
対策1 カ行
「K」ではなく「C」を使用する。「C」は右手の中でも打ちやすい位置にあり、日本語での使用頻度にも合致する。
この方法は、ほとんどの日本語用Dvorak配列で採用されている。
Cのキーを完全にKにしてしまうのか、IMEの側で「CU」を「く」とするように設定するのか、Cに続いて母音を入力したときだけカ行にするかは実装による。
対策2 拗音の「Y」
DvorakY
小指 | 薬指 | 中指 | 人差指 | 伸ばす | 伸ばす | 人差指 | 中指 | 薬指 | 小指 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
, | . | p | y | f | g | k | r | l | ||
a | o | e | u | i | d | h | t | n | s | |
ya | yo | ye | yu | yi | b | m | w | v | z |
母音の一段下に「y」付きの母音を配置。拗音が2打で入力でき、「やゆよ」も1打で入る。
DvorakJP、ACTなど
1打鍵目と、子音入力後の2~3打鍵目で一部のキー配置を換える。子音入力後に「H」「N」など特定のキーを入力することでYを出力する。
ACT 子音入力後の2打鍵目 | ||||||||||
小指 | 薬指 | 中指 | 人差指 | 伸ばす | 伸ばす | 人差指 | 中指 | 薬指 | 小指 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ai | ou | ei | uu | ui | y | y | ||||
a | o | e | u | i | y | y | ||||
ann | onn | enn | unn | inn | y | y |
全部が一度にYの役割を持つのではなく、どのキーになるかは子音の場所によって変化する。
対策3 パ行、ヤ行
DvorakY
ヤ行に関しては、上記の通り、1打鍵で入力できる。パ行は特に対策無し。
ACT09
左手で打鍵する子音は、母音を左右入れ替えて右手で入力する。同じ手、同じ指の連続を避ける。
※2打鍵目 | ||||||||||
小指 | 薬指 | 中指 | 人差指 | 伸ばす | 伸ばす | 人差指 | 中指 | 薬指 | 小指 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
y | ui | uu | ei | ou | ai | |||||
i | u | e | o | a | ||||||
inn | unn | enn | onn | ann |
蒼星、JLOD配列
子音の場所を入れ替え、全ての子音を右手に集める。
小指 | 薬指 | 中指 | 人差指 | 伸ばす | 伸ばす | 人差指 | 中指 | 薬指 | 小指 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
, | . | - | p | g | k | r | l | |||
a | o | e | u | i | d | h | t | n | s | |
b | m | w | y | z |
JLODでは、Pの位置に元々あったFは、HHと入力する。Yの位置にあったVはYYと入力する。
対策4 ザ行、ジャ行
ACTAR
Zが打ちにくいことから、「SR」と続けて打つことでザ行を、「SG」と打つことでジャ行を入力できるようにしている。
その他の特徴
欠点の解消だけでなく、積極的に入力を楽にする機能・アイデアが既存の配列にはちりばめられている。
拡張母音
母音の代わりに別のキーを打つことで、撥音(母音+ん)や二重母音(ai, ouなど)が一度に出力できる機能。
上記のACT配列で、左手の母音の上下にあるものがそれ。たとえば「関西電気保安協会」なら
CannSaiDennCIHOannCYouCai
となり、特に漢語に強い。
さらに「you」「yuu」、「母音+く、つ、き、ち」「母音+っ」「母音+ラ行」「yaku、yoku」などはよく出てくる組み合わせであり、これらを少ない打鍵で入力できれば負担軽減、効率上昇に繋がる。ただしあまり欲張りすぎても覚えきれないし、打ちながら「ここは拡張母音が使える」と即座に(ほぼ無意識に)判断できなければ意味がない。取捨選択が大事。
撥音と二重母音を採用した上で拡張母音をさらに広げようと思ったとき、左手は埋まっているため、取られる方法は主に2つになる。
- 右手にも拡張母音を敷き詰める(子音の後にSを入力すると「aku」になるなど)
- 右手のどこかに拡張母音シフトキーを置き、子音→拡張母音シフト→左手母音の順に入力することで拡張母音を出す
その際、通常のローマ字入力で当たり前にできていたある文字の出し方とぶつかり合う可能性がある。
拡張母音と促音
ローマ字で促音(っ)を表現するには同じ子音を重ねる。ローマ字入力を使っている大多数の人も、おそらくは重ねて打つのが一般的だろう。「っと」はTTOである。
一方で、拡張母音を覚えやすくするためには、規則性を持たせることが重要となる。例えばACTでは「子音に続けて同じ段の中指のキーを押すと『yuu』となる」ルールがある。つまりSTで「しゅう」、RCで「りゅう」となる。同様に、TTでは「ちゅう」となる。
見事にダブってしまう。
ACTでの解消法 - 単独打鍵
ACTでは、促音は同じ子音を重ねるのではなく、Aの上(左小指)に1打で「っ」を入力するキーを用意し、単独で打つようになっている。
だが、これは同じ指で連続打鍵する機会を増やしてしまう。「なった」「かった」のように、「aっ」の組み合わせは多い。それを入力するためには、左小指で続けて打鍵しなければならず、結構な負担を強いる。
Cに機能を譲った結果Kの位置があいているからそこでもよいかも知れない。「iっ」「uっ」で連続してしまうが、使いにくい小指よりはましに感じる。
- 実際はACTの母音の下は1打で撥音を入力できるようになっているため空いていない。
JLOD配列での解消法 - 促音拡張
ACTの考えを元にしつつ上記の不満点を解消した配列として、JLODがある。
促音は同じ子音を重ねないというルールは変わらないが、子音→拡張シフトキー(子音によって変わる)→左手の下段キーと打鍵すると、「母音+っ」が入力できる。これならば不自然な指の動きをする必要がない。
ただし、従来のローマ字入力からはちょっとした意識の変革が求められる。「はっぱカッター」を入力する際、普通のローマ字入力に慣れた人なら「は/っぱ/か/った/ー」と切り分け、順番に意識の俎上に載せるだろう。一方促音拡張では、「はっ/ぱ/かっ/た/ー」という分け方が求められる。
もちろんこれは慣れの問題である。が、将来的に何らかの都合でQWERTY配列で普通のローマ字入力も使わざるを得ない事態もあることを想定すると、キー配列以上に、“意識上の入力文字の切り分け方”の両刀使いは苦労しそうである。杞憂かも知れないが。
自分の考えている解消法 - 拡張母音の位置変更
促音はやはり同じ子音を重ねた方が楽だと思う。
なので、拡張母音の配置に一定のルールは設けつつ、そのルールに従うと位置がダブってしまう場合については別のルールに従って位置をずらし、被らせないようにする、という方法を考えている。
特殊拡張
ローマ字表記との関連性に特に縛られることなく、単純によく使うフレーズを短いキーの組み合わせで入力できるようにする。
JLOD配列を例に取ると、NBで「ので」、WNで「なっておりました」など。この領域は各人の打つ文章によってカスタマイズして使うとよいだろう。
RAKDAO配列
http://d.hatena.ne.jp/nushio/20101224で紹介されている。
子音→母音という流れのイメージから、「左→右だろう!」ということで左右入れ替えた配列。実際、拡張母音をばりばり使わない限りは母音側の方が打鍵数は多くなるので、(右利きなら)右手に持ってくることには一定の正当性があるようだ。