発想としては素直な、だが考察量と実装の重い多重DP。
さらに $|A_i|=1$ の時は実装を分けなければならないのが難しさに拍車を掛ける。
変換元が必ず1文字なので、
「$S$ の $h$ 文字目が、$T$ の中での $i$ 文字目から $j$ 文字目に変化した」という境界がはっきりしている。
(変換元が2文字以上だったら、境界をハッキリ分けられない)
S: ab T: cbcabc 変換ルール a→cc b→ac c→bc ↓ S |a |b | Tのうち cbc は Sの a から、 |cc |ac | abc は b から変換された T |cbc |abc| という境界が明確にある
よってDPで「$S$ の先頭何文字が、$T$ の先頭何文字に変換されたか」を順次求めていけそう。
ただし、これを求めるには、たとえば以下の情報が必要となる。
$DP_1$ が存在する前提で、$DP_{Main}[h,j]$ の求め方は、
h j S: abcd.. T: efghijkl..
$S$ で着目中の最後の文字 $S_h$(上例で'd')が、$T$ のどの部分に変換されたか?
「$m~j$ 文字目に変換された」という $m$ を全て調べ、コスト最小のものを取れば求まる。
m=6 とした場合の例 S: abc | d DP_Main[h-1, m-1] ... 'abc' を 'efghi' に変換するするコスト T: efghi | jkl DP1[m,j,Sh] ... 'd' を 'jkl' に変換するコスト
これでDPを埋めていき、$DP_{Main}[|S|,|T|]$ が答えとなる。
だが、$DP_1$ は直接求めるのが難しい。
変換ルールの各 $C_k$ から変換できる部分を変換していく、ということを繰り返すと、
可能な文字列が爆発的に増え、しかもどれが最終的に $T$ の部分文字列になるかの判別が難しい。
そこで、補助として「変換先 $A_k$ のそれぞれに対しても、$DP_{Main}$ と同じようなDPを作り、変換コストを求める」という方針をとる。
こうすれば、$T$ の部分文字列だけを考慮すれば良くなる。
$A_k$ を $T[i:j]$ に変換するコストが分かれば、$C_k→T[i:j]$ の変換コストは それ+1 である。
(本当は $|A_k|=1$ の変換があるせいでそうとも限らないのがややこしいのだが、ひとまず大まかな方針としては)
以下のDPを定義する。
$T[i:j]$ は $T$ の $[i,j)$ の範囲を指すものとする。
長さ1の区間に関しては先に埋めてしまえる。
また、$T_i$ 以外の文字からの変換に関しては、長さが1($|A_k|=1$)の変換を繰り返してできる可能性がある。
アルファベットの各文字を頂点として、
$|A_k|=1$ であるような $k$ に限定して、$A_k→C_k$ と、本来の変換とは逆向きに辺(コスト1)を張ったグラフを考えることで、
$T_i$ を始点としたDijkstraにより、各文字から $T_i$ にする最小コストが分かる。
(目的地が決まっていて、各出発地からそこに到達するコストを求めるイメージなので、逆辺になる)
$DP_2$ は、$A_k$ の最初の1文字と、先ほど求めた $DP_1$ からわかる。
変換によって文字が減ることはないので、$T[i:j]$ が1文字ならば変換元も1文字しかあり得ないため、
$l \ge 2$ を考える必要は無い。(不可能でありINF確定)
いま、$DP_1[i,j,c]$ と $DP_2[i,j,k,l]$ を求めるとする。
この時、$j-i$ より短い区間の $DP_1,DP_2$ は全て求まっているとする。
また、長さ1の区間は既に埋めたので、$j-i \ge 2$ とする。
$DP_2$ に関しては、「DPの発想」の項で述べた $DP_{Main}$ の考え方と同様、 最後の1文字がどの範囲までに変換されるかを全探索することで、求められる。
ただしこれが可能なのは $l \ge 2$ までであって、 $l=1$ の時は、$DP_1[m,j,A_k[l]]$ がまさに今から求めようとしている $DP_1[i,j,c]$ の $c=A_k[l]$ のときに相当するので、 まだ求まっておらず、別の方法をとらなければならない。
1つの文字 $c$ を $T[i:j]$(※長さは2以上)に変換するには、主に2つのルートがある。
注意すべきは、①が可能であっても、②の方が安くなることがあること。
Dijkstraで実装する。
まずは①によって $T[i:j]$ への変換が可能な (文字 $c$, ①の方法によるコスト $v$) を列挙する。
そこから、区間の長さが1の時にも行った、逆辺を張ったグラフでのDijkstraにより、各文字からの最短コストが求まる。
多始点Dijkstraとは少し違うが、似たような感じで、初期のキューに列挙した $(c,v)$ を入れた状態から開始すればよい。
Dijkstraの結果に従って $DP_1[i,j,c]$ と $DP_2[i,j,k,1]$ を埋めれば、$DP_1,DP_2$ とも、$(i,j)$ における全てが埋まった。
後はこれを繰り返して $DP_1$ を完成させ、それを元に $DP_{Main}$ を実行すれば、答えとなる。